熊野健康村プレスルーム
調査研究結果報告:熊野古道の心身への健康効果に関する検証調査

2004年7月に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」。その中心的な資源である熊野古道は古くから多くの人々が祈りをたずさえ蘇りを求めて歩いた道です。
その熊野古道ウォーキングが及ぼす心身への健康効果について科学的に検証調査した。


検証結果の目的

昨今、国民の健康への関心が高まる中、公園や歩道などでウォーキングを行う人が増加してきた。また、介護予防や健康増進のために積極的に運動を取り入れようとする動きも顕在化している。この様な背景のもと熊野古道の自然環境や立地条件に着目し、語り部とともにゆっくり歩く熊野古道ウォーキングが及ぼす心身への健康効果を明らかにすることにより、安全かつ効果的な健康増進活動や観光振興に活用するための基礎調査とする。

調査方法

(1)調査体制
本調査は、和歌山県、和歌山県立医科大学、和歌山大学、日本福祉大学、(財)和歌山健康センターの産官学共同からなる「熊野古道ウォーキング調査プロジェクトチーム」が連携して行った。

(2)実施機関
本調査は、平成16年11月〜平成17年2月にかけて実施した。

(3)調査概要
1)熊野古道の環境調査
 *熊野古道の高低差、距離の測定
 *紫外線量
2)1回ウォーキングの生理的、精神的、心理的影響
【コース:熊野古道 本宮大社付近】
1.発心門〜本宮大社 6.8km 37名
2.湯の峰温泉(赤木越) 7.1km 36名
3.湯の峰温泉〜本宮大社(大日越) 3.4km 31名
4.比較対照検査:和歌山市河西公園90分歩行15名
【生理的効果(自律神経、免疫、内分泌)】
*付加測定
加速度歩行数、血圧、脈拍、血中乳酸、酸素飽和度、筋硬度、血液検査
*効果測定
唾液中IgA(免疫能)、血液レオロジー(血液サラサラ)
*精神的効果(思考)
前頭連合野テスト
*心理的効果(感情)
POMS(気分の検査)
唾液中コルチゾール(心理的ストレス)
3)習慣的なウォーキングによる生理的、心理的影響
【2ヶ月のトレーニング効果】
1.熊野古道トレーニング 11名
2.平地公園トレーニング 18名
【生理的効果(自律神経、免疫、内分泌)】
血圧、内臓脂肪面積・体力測定、血液レオロジー、血液検査、大腿部筋断面積

*心理的効果(感情)
POMS(気分の検査)
*行動変容
生活習慣に関する関心度

調査結果及び考察

(1)健康への影響(安全性)
下図は、熊野古道ウォーキング時の心拍数の推移の一例(65歳女性)である。約7km(3時間)の行程の全てにおいて、平均は90拍程度であり、最大でも120拍を超えなかったことから、安全に歩けるコースであることがわかった。
また、紫外線量を熊野古道ウォーキングコース11箇所と平地公園の日なたと日陰部分の2箇所で測定した。その結果、熊野古道の紫外線量の平均値は、平地公園の日なたと比較すると1/50程度であった。

熊野古道ウォーク中の脈拍数

(2)生理的効果・心理効果
唾液中コルチゾールの変化【ストレスを軽減】
ストレスホルモンの一種である唾液中のコルチゾール値が熊野古道ウォーク(1回)後に減少。比較対象調査として行った和歌山市の平地公園では有意な変化はみられなかった。



唾液中lgAの変化【免疫力をアップ】
免疫力を示す物質である唾液中のI g A (免疫グロブリン)は、和歌山市からの参加者は熊野へ到着した時点で増加し、熊野古道ウォーク後も高い状態で維持した。


熊野古道におけるPOSMの変化【精神を安定させる活動性アップ】
POMS(※)という心理テストの結果、緊張、怒り、抑うつといった感情が減少し、活動性が増加する等、心理的に有意な効果が認められた。
※*POMS=Profile of Mood States(感情プロフィール検査)


【脳トレ効果・大脳活性への影響】
下図は、前頭葉の働きをブランチングテスト(コンピューターを用いた前頭連合野の機能測定テスト)の一例である。
ウォーキング前に比べウォーキング後の方が課題に対する正解率が高くなっていた。本調査の結果と先行研究から推測すると、熊野古道ウォーキングにより前頭連合野の働きが高まる可能性がある。
ブランチングテストによる前頭葉テスト

まとめ

熊野古道ウォーキングが、健康へ及ぼす影響について様々な角度から調査を行った。
その結果、1回のウォーキングで得られる効果として、免疫力の向上、ストレスの軽減、気分の改善効果、適度な脚筋力への刺激効果などが見られた。併せて、習慣的なウォーキング調査では、2ケ月の熊野古道を利用したトレーニング効果は、最大酸素摂取量の増加、大腿部筋断面積の増加、内臓脂肪の減少など、平地でのトレーニング以上の効果が見られた。